引き寄せ歯医者の原田です。
国際口腔インプラント学会の認定医の更新のため、大阪での勉強会に参加してきました。
今回のテーマは、歯の治療のデジタル化についてです。
今まで歯医者さんで被せ物(冠:クラウン)を作る時は、複雑なステップを踏まないといけませんでした。
(1)歯型を型取りするためのトレーを口の中に合わせる →
(2)印象材で歯型を取る(結構苦しくて苦手な人もいる。材料が必要なのと型取りのトレーの消毒・滅菌、そして使用済みの材料の処分でゴミが出る) →
(3)模型を作る : 型取り材に石膏を流し込んで固まるのを待ちます。出来上がった模型は形態修正したり、歯を作る作業をするために 少し専門的な話になるのですが、色々と手を加えます →
(4)作業用の模型の上にワックスで歯の形を作る →
(5)そのワックスを埋没材という白っぽい石膏のようなものに埋める →
(6)ワックスの入った埋没材を高温の電気炉に入れて中のワックスを溶かす →
(7)金属を溶かして高温の埋没材の中に一気に流し込む →
(8)埋没材から歯の形になった金属を取り出す →
(9)余分な金属を除去して形態修正、その後研磨する →
(10)口の中で隣の歯との接触度合いやかみ合わせを調整する。
ざっとこんな形で歯を作ります。
何となく時間と手間がかかることはわかっていただけたでしょうか?
そして、こうしたそれぞれのステップで必ず誤差が生じます。
その結果 作った歯(冠)が入らないということが生じます。
こうしたことを歯科の世界では50年以上やってきました。
一方でデジタル化の波は歯科にも訪れて歯科でもデジタルの技術を使うことは10年以上前から試みられてきました。
これは、主に工業界で使われていた技術を歯科に応用したものでした。
CAD/CAM もそのひとつです。
具体的には、デジタルカメラで歯の写真を写し、そのデータを元に歯(冠)を作る技術です。
3D プリンターも歯科の模型を作るのに利用可能です。
それならこうした技術が日本全国のすべての歯科医院で使われているかというと、まだまだです。
それは、現時点ではあまりにもコストが高いからです。
例えば、きちんと使用に耐えうる口腔内カメラ(スキャナー)は、1台 何と500万円もします。さらに年間の維持コストが別途30万円かかります。
また3D プリンターで歯科の模型(歯型の模型)を作ると何と3万円ものコストがかかります。
これではまだまだ普及しませんね。
しかし、年を追うごとに性能が良くなり、料金が安くなるのがデジタルの世界です。
例えば私が初めてデジタルカメラを買ったのは、20年近く前ですがたった85万画素のデジカメが確か3万円以上もしました。
最初は38万画素のデジカメが販売されたのですが、それから少し待って発売されたのが 85万画素のデジカメでした。
当時は写真はプリントして見るものという認識がありました。
その後しばらくして200万画素だとA4 まで引き伸ばしてもきれいに見えるとヨドバシカメラの店員さんが説明していたのを覚えています。
今なら2000万画素のデジカメが1万円しないで買うことができます。
こんなわけでそれが5年後になるか10年後になるかはわかりませんが、歯科治療で歯型を取るとか、石膏で模型を作るとか(使用済みの石膏は かさばって処分するのに ものすごい量のゴミになってしまいます)、再度型取りさせてもらうとか、作ったものが入らないといったことはなくなると思います。
今回の勉強会は、そんな過渡期にある歯科のデジタルの世界を実際にデジタルで技工をしている技工士さんの立場からわかりやすく説明していただきました。
今まで私が参加したデジタル治療に関することは、歯科医師やメーカーの方の話がほとんどだったので新たな気付きと学びがありました。
日帰りで大阪まで行った甲斐がありました。
講師の皆さま、会場の設営、準備の皆さま、ありがとうございました。