歯の治療は時間がかかりすぎる!?

よく歯の治療は時間がかかる、一度通院し出すとなかなか終わらないという話をききます。
ただし、時間がかかるのには2種類あります。
ひとつは不必要に時間をかけているケース、もうひとつは必要があって時間をかけている場合です。

もちろん前者は良くないことです。
例えば根の治療( Endodontics:歯内療法) は欧米では1回治療とか、かかっても3回で一区切りつけるのが常識です。
なのに日本では1本の歯に数ヶ月どころか半年もかけているケースがあります。
これは明らかにおかしいです。

一方、時間をかけないといけないケースもあります。
例えば、かなり大きなむし歯で一気にむし歯になった軟らかい部分を除去すると歯髄(歯の中のいわゆる神経)が露出してしまい、抜髄(いわゆる神経を取ること)しなければならなくなる → 歯の寿命が短くなる といった事は避けたいものです。
そこで3か月から8か月かけて何とか抜髄しないで、結果的に歯を長持ちさせようというのがステップワイズエキスカベーション法です。
これは大きなむし歯の場合、むし歯を一気に除去せず、最初は(歯の神経を取るのを避けるため)わざとむし歯の部分を一部残し、3か月から8か月後に活動性のむし歯(軟化象牙質)を除去して結果的に歯を長く維持する方法です。

以下は、原田歯科のスタッフのために書いた2014年8月のスウェーデン マルメ大学でのオーラルフィジシャン育成 研修の内容です。少し専門的なところがあってわかりにくいかもしれませんが、参考にして下さい。

小さなむし歯(C0, C1)をすぐに削ってつめるのは、1960年代の治療

1970年代にフッ化物入りの歯磨きペーストをドラッグストアで買えるようになった。
その結果、エナメル質でカリエスが進行せず、象牙質でカリエスが進行する事例が増えた。
修復物のlongevity: 成人の中央値は、8~10年。小児や思春期だともっと短い。

萌出後 最初の1年が最もカリエス感受性が高い。

12歳から22歳の隣接面カリエス進行の中央値(1999年のMejare の研究):エナメル質から象牙質に到達するのに8年以上かかる、象牙質に到達したカリエスが大きくなる(治療が必要なレベル)のに3.1年かかる。
しかし、10%の病変は比較的早く、内側へと進行する(それぞれ、2.6年と 0.8年)。
上顎5番の遠心と下顎6番の遠心のむし歯が進行しやすい。
既存のむし歯の数が多い人ほど、そのむし歯が進行するスピードが早いことがわかっている。

明らかに穴があいたときや象牙質にむし歯が進行したときが、むし歯の治療をすべき時期。

軟化象牙質の除去:low speed で低トルクのラウンドバー(今 医院にあるものだとマニーのミニマルインターベンションバー)か sharp なhand instrument(最近購入した白水貿易のsharpninng しながら使うもの)

第3象牙質は2種類ある:反応性のもの(odonntblast がダメージを受けて自己修復)と修復性のもの

カリエスは外層のみ除去する。stepwise excavation が推奨される。米国式の 1 step のindirect pulp capping とは違う;
仮封剤を密着させるため窩洞内の周辺部分のみカリエスを徹底的に除去する。中央部では壊死した象牙質の外層のみ除去して、3~8 か月グラスアイオノマーセメントで仮封する。その後、re-entry,final excavation, permanennt restration する。
むし歯を封鎖(仮封)することにより、菌の環境が変わる、むし歯菌が 進行を停止したカリエスに見られるむし歯菌に類似してくる、active caries が inactive caries へとシフトする。
stepwise excavation は、1~ 4.25年で,95~100%の成功率があるという研究(1996年のLeksell, 1999年のBjomdal )があり、エビデンスがある。
さらに、ダン・エリクソンらの314名を対象にした The CAP-1 trial でもこのstepwise excavation が実証された。ちなみに、このThe CAP-1 trial は痛みを訴える患者を対象にした唯一の研究である。

齲蝕検知液は、たんぱく質を染色するので、overexcavation の恐れがある。

高齢になるほど、全身の病気のほうに感心が行き、介護が必要になると口腔内のことがおろそかになるのは、スウェーデンでも同じ。

患者が自宅で何をするかということのほうが医院でやることよりも重要。

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